お久しぶりの朗読勉強会に参加しました。
作品は
星 新一さんの、「ある人生」。
主人公の「男」はある年齢を過ぎてから、どんどん不安になっていく。
なぜなら、いつもすべてが順調だったから。
病気が奇跡的に治ったり、大学受験で補欠合格したり、沈没した船から助かったり、
仕事で大損をしてやけ気味で入ったカジノでとんでもない大儲けをしたり。
”いくらなんでも幸運すぎる、何かの罠ではないか、夢ではないのか。”
今までが良すぎたからひどい相手を押し付けられても文句は言えないと覚悟して結婚するが
これまた美人かつ善良な女性・・男はますます不安が募っていく。
これまでがあまりに順調なだけに、なにかあるたびに、いやな場合を考えてしまう。
「すなおに、幸運を受けてればいいのだ」
こう思おうとするのだが、なかなか、そうはいかない。
あしたにも不幸が訪れるのでは。おびえながらの毎日だった。
そのくせ、生活はうまくいっているのだ。
目先の処理に追われて、気がまぎれることもない。精神的におかしくなり、自分が自分でないようにも思えてくる。
とにかく、外見はすばらしい人生だったわけだ。
緊張の連続のためか、平均寿命には及ばなかったが、わけもわからずに一生をすごした。
よんでいくうちに、笑いが止まらなくなりました。
順風満帆なのに不安がつきまとい、悩み、おびえながら過ごす男。
羨ましいほどの人生を歩んでいるけど
この男は、毎日どんな表情ですごしていたのでしょう。
なぜに・・はたから見ると可笑しくもありますね^^
このお話はとても深いものがあります。
星さんは何を思い何を伝えたかったのでしょう。
帰り道。
参加していた年配の女性とご一緒しました。
その方はご主人が難病になりお世話をする毎日で、ご自身も癌を患ったそうです。
・・さぞ辛くて苦しくて大変だろうと想像されませんか?
しかし、女性はものすごいエネルギッシュ。
笑顔笑顔、しゃべるしゃべる、とまらない笑
「帰ったら小さい子が待ってるのは大変だけど、うちなんか難病の旦那が待ってんのよ~いやよ~笑」と。
さぞ大変でしょうとお尋ねすると
「体は嘘がつけないからガンにはなっちゃったけど、
ほら、せめて旦那には生きてるのはいいもんだと思ってもらいたいじゃない。
すぐ『俺は難病なんだ』とくさるもんだから
『あなた今までたくさん楽しい思いしてきて何言ってんのよ!』て叱るのよ笑
私も朗読に通うのは大変だけど
せっかく生きてるんだから、別世界は必要よ。何かやらなきゃ。
だから、毎回来られなくても育児が大変でも、絶対やめちゃいけないわよ、続けるのよ、あなた!」
とあふれる笑顔で、軽い足どりで、電車に乗り込んでいきました。
その勢いと、計り知れない大変さを経験したうえでの言葉の重みといったら。
女性の後ろ姿を見つめながら
「ある人生」で星さんが伝えたかったことが
私なりにみえた気がしました。
とにもかくにも「ある人生」のようなおびえながらの毎日ではなく
「笑顔ある人生」を送りたいものですね^^